GLORY DAYS

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落とされて分かった自分の欠点

難しい試験問題に対して頭を悩ませる学生がいる、どこの大学でも見られる光景である。

魚谷が頭を悩ましていた科目は刑法総論、
出題は「主観的違法要素」と「第三者の行為に関する因果関係」だった。

同じ講義を受けていた柴田と試験の答えを考えていたが、答えがサッパリ分からない。

「弱ったもんだね。これで2単位はパーかな。」
「なんだよ。あきらめるのかよ。」
「まさか。家に帰って考え直しだ。」

ここで柴田が思わぬことを口にした。
「なぁ、お前が考えた答えをメールでみんなに送れよ。いつも、連絡事項を回している要領でさ。」

「馬鹿なことを言うなよ。俺が分からないんだから、どうしようもないだろうが。」
魚谷の発言は当然だろう。
自分が理解していないものを他人に教えられるはずがないからである。

その夜、魚谷は教科書はもちろん、インターネットまで駆使して試験の答えを考えた。

「あの夜は試験に関するメールを10通以上やり取りしたんじゃないでしょうか。
 先輩から単位認定は厳しいと言われていたこともあり、学生はみんな必死でした。」

試験当日の明け方5時ごろ、魚谷は全ての答えを完成させた。
完成させたと言うよりは覚悟を決めたと言った方がいい。
「これ以上考えても、解答は浮かばない。それなら、この解答を提出しようと思ったんです。」

この時、魚谷の頭に柴田の言葉がよみがえった。
「お前がメールで答えを送れよ。」

「(もしかして、あいつは期待しているんじゃないか。)そう思ったんですよ。」

そう思った魚谷はパソコンに向かって、自分の所有しているブログに
自分の解答を打ち込み、アドレスを周囲の学生に送信した。

「反応はありましたよ。ある男子学生は「これで単位認定は決まった。」とまで言っていました。」

魚谷はこの時「これだけ評判が良かったのだ。おそらく全員が単位を認定されるだろう。」と
考えていたという。

だが、男の人生なんて思ったことの十分の一も上手く行かない。
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必修科目の担当がいいかげんな講師だった

大学生にとって必修科目とは非常に重要な意味を持つ。
何故ならこの科目一つで、卒業出来るか出来ないかが決まってしまうからだ。
だから、大学生は必修科目の教授が出来るだけ単位を取り易い人間であることを祈るし、
厳しい教授であれば、汗を流しながら耐えるしかない。

魚谷が通っている大学では英語が必修科目だった。
だから、魚谷に限らず学生達は英語の単位を取るのに必死になる。

魚谷のクラスを担当していたのは、宮田という69歳の男だったが、
この男がまたとんでもない人間だった。
最初の講義をすっぽかすわ、講義中は雑談が多いわ、
講義内容を他のクラスとごっちゃにしているわ、学生にとっては散々だった。
それでも、魚谷たちは必死に耐えた。
何しろ必修科目だから、逃げ出すわけにはいかないのだ。

しかし、自分がいい加減な講義をしているという自覚の無い宮田は
日々の講義に四苦八苦している学生に対して、こう言ってのけた。
「君たちはやる気が無いねぇ。受け持つボクも張り合いが無いよ。」
この発言に一部の学生達が怒り狂った。
「おい、あの宮田というのは一体何なんだ。あの男だって1回目の講義に来なかったじゃないか。
 そんなに講義を受け持つのが嫌なら、全員に単位を与えるぐらいの事をしてみろよ。」

魚谷はその時の事をこう語ってくれた。
「まぁ、とにかく辛い講義でしたよ。講師が何を言っているのか分かりませんし、
 雑談だと思って気を許した途端に講義が再開される。必修科目ですから必死で耐えましたが、
 そうでなければ、間違いなく投げ出していたでしょうね。」

試験が近づくと、魚谷たちはいよいよ必死になった。
宮田の講義から逃げられるか逃げられないかが決まるからである。
「再履修はゴメンだ。その思いだけでしたね。」

そうこうしているうちに、試験本番の日が来た。
問題を見て魚谷はずっこけた。
和訳がたった5問出題されているだけだったからである。
「あの野郎、いよいよ手抜きに走ったな」
しかもこの時の試験は電子辞書の持込さえも許可されていた。
「これで、単位を落とせば俺は切腹ものだ」魚谷は本気でそう思った。

1ヶ月後、成績表をみて魚谷は苦笑いを浮かべるほか無かった。
何のことは無い。宮田の英語の成績が全科目の中で一番良かったからである。

男は苦い酒を飲む(by近藤唯之)

苦い酒を飲んでいる。

切なさとやるせなさを肴にして飲んでいる。
人間の業の深さを肴にして飲んでいる。
運命の巡り合わせの不思議を感じながら飲んでいる。

苦い酒を飲んでいる。いくら飲んでも酔えない苦い酒を。
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