GLORY DAYS

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落とされて分かった自分の欠点

難しい試験問題に対して頭を悩ませる学生がいる、どこの大学でも見られる光景である。

魚谷が頭を悩ましていた科目は刑法総論、
出題は「主観的違法要素」と「第三者の行為に関する因果関係」だった。

同じ講義を受けていた柴田と試験の答えを考えていたが、答えがサッパリ分からない。

「弱ったもんだね。これで2単位はパーかな。」
「なんだよ。あきらめるのかよ。」
「まさか。家に帰って考え直しだ。」

ここで柴田が思わぬことを口にした。
「なぁ、お前が考えた答えをメールでみんなに送れよ。いつも、連絡事項を回している要領でさ。」

「馬鹿なことを言うなよ。俺が分からないんだから、どうしようもないだろうが。」
魚谷の発言は当然だろう。
自分が理解していないものを他人に教えられるはずがないからである。

その夜、魚谷は教科書はもちろん、インターネットまで駆使して試験の答えを考えた。

「あの夜は試験に関するメールを10通以上やり取りしたんじゃないでしょうか。
 先輩から単位認定は厳しいと言われていたこともあり、学生はみんな必死でした。」

試験当日の明け方5時ごろ、魚谷は全ての答えを完成させた。
完成させたと言うよりは覚悟を決めたと言った方がいい。
「これ以上考えても、解答は浮かばない。それなら、この解答を提出しようと思ったんです。」

この時、魚谷の頭に柴田の言葉がよみがえった。
「お前がメールで答えを送れよ。」

「(もしかして、あいつは期待しているんじゃないか。)そう思ったんですよ。」

そう思った魚谷はパソコンに向かって、自分の所有しているブログに
自分の解答を打ち込み、アドレスを周囲の学生に送信した。

「反応はありましたよ。ある男子学生は「これで単位認定は決まった。」とまで言っていました。」

魚谷はこの時「これだけ評判が良かったのだ。おそらく全員が単位を認定されるだろう。」と
考えていたという。

だが、男の人生なんて思ったことの十分の一も上手く行かない。

1ヵ月後の成績表配布の日、成績表を受け取った魚谷は真っ青になった。
成績表の刑法総論の欄に書かれていた点数は34点。つまり落第点である。

「これは、俺の解答が間違っていたということではないのか。
 だとしたら、俺が書いた答えを参考にした学生は皆落とされたのではないか。」

「私一人が不合格になるのは構わないんです。ダメだったか、と諦めがつきますから。
 ただ、問題は周囲の学生に対してどう責任を取るかですね。
 私の考えた答えのために不合格になったとしたら、どうやっても取り返しが付きませんからね。」

あろうことか、「単位は確実だ」と宣言していた男子学生が
不合格になっていたことが分かり、魚谷はますます震え上がった。

魚谷はその日の夜、不安に思いながら女子学生2人にメールを送った。
内容はもちろん刑法総論の成績に関する話である。
魚谷にとって意外だったのは、この2人が合格点を貰っていたことである。
「もちろん不思議に思いましたけれど、逆に安心もしたんです。
 全員が落とされていたのではないと分かりましたから。」
さらに後日、別の女子学生からは「おかげで、高得点がもらえたよ。」とまで言われた。

魚谷はこれでますます訳が分からなくなった。
「何故、私だけが落とされたのか全く見当がつかないんです。
 或いは、カンニングと判断されて私だけが不合格になったのか。本気でそう考えていました。」

こうなると、魚谷に残された手段は一つしかない。担当教授との直談判である。
魚谷は意を決して金本教授の研究室に向かった。
「私の答案のどこが悪かったのでしょうか。教えて頂きたいのですが。」

金本教授は、魚谷の答案用紙を提示しながら丁寧に説明してくれた。
「君の答案だと、何故この問題を検討するのか、また検討すべき材料は何なのか。
 そうした理由付けがないんだな。こういう記述が無いようでは点数を低くせざるを得ない。
 解答内容は、決して勉強していない学生が書いた答案でないことは分かるのだが。」

魚谷は、この瞬間初めて自分が落とされた理由が分かった。
「合格点を貰った学生達は、そういうことが書けていたんですね。
 私の答案にはそういう部分が無いから落とされた訳ですよ。
 法律学を学んで1年半になりますが、あの時初めて答案を書く奥深さや難しさを知りました。」

さらに魚谷は、法律学を勉強する上で非常に役立つ参考書まで教えてもらったという。

私はここで思うのだ。
必死で考えた答案が不合格になったことは、魚谷にとって良くない話だった。
だが、合格していれば、魚谷は自分の欠点を知らないまま法律の勉強を続けることになる。
それどころか、参考書の存在も知らないままだっただろう。

人間、何が幸いするか分からないという話なのか。
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