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6行で合格、裏表を埋めて不合格

最初に、ある予備校講師の話をする。名前をKといい、担当教科は現代文だった。
Kは生徒に向かって次のように教えているという。
「いくら書いても書き賃はもらえないんだ。正しい答えを書かなければ無意味なんだ。」
要するに「聞かれたことに答えていなければ、何文字書いていても零点だ。」というのである。
大学受験の答案用紙を書くのに、これほど分かりやすい理屈は無いだろう。

今回私が書くのは、わずか6行の文章で満点をもらったMと
用紙裏表を埋め尽くしたのに、書き賃さえもらえなかった2人の男子学生の話である。

大学生活において自分の所属ゼミを選択するほど重要なことは無い。
何しろ、自分の大学生活の方向が決まってしまうからだ。

「なぁSよ。一緒にA先生のゼミに入らないか。」
Sにはそれを拒否する理由が無いから二つ返事で引き受ける。

ゼミに入るためには志望理由書を書かなくてはいけない。
「ここで何を書くかが勝負の分かれ目になる。」そう考えたSは
「なんとしても、貴方のゼミに入りたい。」その思いを込めて書きに書く。
これまでの学生生活など、当たり障りの無いことから、
果ては中国の刑罰の歴史まで持ち出した。
提出期限3日前になって、SはA4用紙の裏表全てを埋め尽くした。

ここで読者の方はこう思うのではないか。
「自分から言い出すぐらいなんだから、Mはもっとすごい志望理由書を書いたんだろうなぁ。」

とんでもない話である。
なんと自分から誘ったにも関わらずMは期限2日前になってまだ一文字も書けていない。

しかも悩んでいる最中に、Sに1通のメールを送っている。
「なぁ、俺はもうだめだよ。お前一人で頑張ってくれ。」

Mは悩みに悩んだ挙句、とある刑事事件についての意見を書いて提出することにした。
その行数、わずか6行である。

後日、希望者多数のため面接選考が行われることが発表された。
面接当日、Sはひたすら自分をアピールする。三国志の武将の話を持ち出して
自分を知ることの重要性を説く。そのためにもこのゼミに入りたいのだと。

一方、Mは面接が始まるとA教授から、こう切り出された。
「やぁ、君だったのか。志望理由が6行で終わっているから、どんな人かと思っていたよ。」

Mは苦笑いを浮かべるしかなかったという。
「周りは裏表を全て埋めている学生ばかりなのに、私はたったの6行。
 これでは、不思議な奴だと思われるでしょうね。」

とにかく、2人は面接を終えた。

発表の日、Mは一足早く結果発表を見に行くことにした。
どうせまだ張り出されていないだろう、という軽い気持ちもあった。
ところが、いざその場所に行くとすでに結果発表を待つ人だかりができていた。

先に来ていた男子学生がMに声をかける。「おう、お前は受かっていたよ。」
「そうか、俺は受かったのか。」Mは一安心した。
しかし、これで全て終わったのではない。
一緒に受けたSの結果も確認しなくてはならないのだ。
人だかりをかき分けて、ようやく結果発表が読めるところにたどり着く。

Mは呆然としてしまった。なんとSの名前が何処にも無いのである。
「あの時は参りましたね。彼にどんな顔して会おうか真剣に悩みましたから。」

当然の話だろう。自分だけが嬉しそうな顔をするわけにはいかないのだ。

2日後、MはSに声をかけた。「残念だったな。お前、どうするつもりだよ。」
「何で俺は落とされたんだろうなぁ。さっぱり分からないよ。」
「そうだよな。俺だって何で採用されたか分からないんだし。」

Mは苦笑いを浮かべて、その時を振り返ってくれた。
「ああいう時は、何を話せばいいのか分からないですね。
 別の友人と話をしたんですが、A教授は多少いい加減なところがありましてね。
 面接は集団単位だったんですが、各グループから1人ずつ落とされたんじゃないか、
 そういう話をしたんです。でも、落とされた彼に向かってそういう話する訳にもいきませんし。」

その後、Sは第二志望のゼミの受講を許可された。
その知らせを聞いたとき、MはS以上に安堵したという。

「彼なら大丈夫だと思います。私より、実力は上ですから。
 A教授のゼミを落とされて良かった。そう言ってもらいたいですね。」

SとMのゼミ生活は9月から始まる。
2人の運命がどう展開するのか、じっくり注目したいと私は考えている。
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